アルスノート

形譜へのアプローチ　　自然の形を形譜にすることは，頭の中では誰もが行っている．だがその痕跡は，素描に残されることがはあるが，形譜としての位置付けは弱い．目の前にあるものをわざわざいい加減に描く必要もなかったわけだ．だが，CGの研究者たちには必要だった．コンピュータで立体表現のできることを実証したかったからだ．それでも，これが形譜であるということを自覚している場合は少ない．それほど人間は，情報処理の天才なのである．「形譜はさまざまな解釈ができる．」と言うと，「そんなことは当たり前だ！」といった答えが返ってくる．「では，この貝の形譜の著作権は誰にある？　そして著作隣接権は？」と聞くと，やっと自然の著作権を認めることになる．では，写真家には著作隣接権のみがあるのだろうか？厄介な訴訟問題を蒸し返す気はないが，いまでも自然が圧倒的な造形力をもつことは確かなのだ．となると，静物画や風景画の作者は，著作隣接権をもつのみなのだろうか？社会が決めることとはいえ，かなり厄介な問題かもしれない．そんなことに触れもせず，３Dデータは，蔓延していくだろう.
 権利の争奪でなく，造形を，誰もが，如何に楽しく行えるかを探求したい．