私における遠隔彫刻

吉川信雄

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布地のような、ラシャ紙のような、木製のような、金属板のような、プラスチック板のような、飴細工のような、空砲のような、煙のような、それは例えば素材についていえば何でもよかった。映像の中で彫刻できるものであったなら。ただ、その彫刻を置く場所が欲しかった。今。できるなら、彼のイタイアの地のバジリカのとてつもなく高い天井の下の冷たい大理石の床の上に、それを置くだけのわずかな空間が欲しかった。いや、私はアナログ的な夢想を言っているのではない。この上なく現実的で、この上なくデジタル的な構想を語っているのだ。欲しいのは空間。恋する空間。訪れたくても訪れなかった、あるいは、訪れても足を踏み入れなかった空間。今、私は素材であるかたまりとノミとハンマーを持って、サンピエトロ大聖堂のミケランジェロのピエタ像のある場所へと進入する。死せる我が子キリストを抱く母マリア像の胸に刻まれたミケランジェロ唯一の自筆のサインに敬意を表し、許しを請い、少しの間、その場所で私は自らの製作を始めたいと思う。もちろん、そこは世界有数の観光地。観光客の邪魔になるべくもない身分ゆえ、というわけでは毛頭なく、なんの遠慮もなく、私は、日本の川崎市麻生区の自宅の小さなアトリエから、まさに映像のリモコン操作を始めようとしているわけである。インターネットにより遠隔彫刻。観客は・・・?もしかしたら、非常に個人的な家族的なアットホームなサンピエトロ大聖堂になるかもしれませんけどね。

スピンアート小名浜

2003年

Cプリント・アニメーション

敏感な一角獣

Cプリント 2000年