アルスノート研究所 / 研究紹介 
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更新: 21/04/12 <10/02/15
■概要 1.前文. 2.研究の概要と理念.  3.研究の目的. ■ 4.研究内容.■ 5.研究背景

■ 概要
更新:08/09/30 >09/12/18> 21/04/12

研究のまえに

● 過去の実証的作品リストはこちらです.現在の形典の視点から解説とリンクを加え,更新していきます.
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■ 1.前文
 
見方が変われば,見え方が変わります.生き方を変えれば,世界も変わります.

「統合」とは,知識の寄せ集めでなく,様々に科学するこころの働きを自ら意識し,一人の心により合わせることです.

「造形ノート」展より

「さあ 行こう!」
と言って友は歩き始めた。
行動の前の「言葉」は
互いに他者であることの
確認でもあり、忘却でもある。

造形活動における「ノート」は
その確認と忘却にどう関わるであろうか?

「さあ 見てみませんか!」

1998/11/9 ~ 11/15  KEN ISHIGAKI

 

 21世紀,私たちはは膨大な文化遺産の只中で,新たな心のよりどころを探し続けています.生きる手段となった複製的生産が引き起こす物と情報の過剰な日々.どのようにすれば,無計画な浪費や争いによる破壊から,心の置き所を定めることができのるでしょうか?

 人間として生まれながらにもっている広い視野と好奇心を失っては,先端的研究の広がりを察知できず,他のジャンルとの横断的ひらめきも生まれません.視野を極度に狭めた政策のつまずきが、国土破壊の現実を露呈し,「安全・安心神話」が地に落ちました.新型コロナも収束への行動計画がありません.行政による情報の開示と,自由な報道による国民の分別ある判断,独立国家としての政府の遅滞なき決断と実行が、早急に必要です.治世も及ばぬ数十年・数百年先をあてにした廃棄物の安全・安心や、パンデミックのさなかに他国のワクチン供給をあてにする為政者は、異常です.そのような廃棄物や開発の遅滞を生み出さない行動をとることが、日々の治世でできる最善のことなのですから.

 際限なく先鋭化し細分化する教育.資金繰りで視野狭窄に陥る先端科学に、若者が心のよりどころを求められるはずもありません.デフレが続く世界的な生産力の向上にたいして,弱肉強食的経済成長は限界です.国境を越えた企業戦略が行き詰まる中で,国境を越えられないメタボな国家財政が成り立つはずもありません.通貨の仮想性は、堅持できるでしょうか?
 そんな時代に芸術は,造形デザインは、何処を目指すのでしょう?常にあたらしい視点を生み出し,創作のエネルギーを絶やさず、しっかりと時代に向き合う教育の基盤構築ができているでしょうか?それらの基盤の上で、示威的でも投機的でもなく、真っ直ぐ心に到達する芸術運動が生まれ、グローカルで持続的な経済エリアが形成されてゆく時代を迎えられるでしょうか?堂々と生き様を披瀝できる文化の構築こそが,はやりのSDGsでもあり、やがてはお互いに旅の楽しみとなるはずです. 11/09/17,18/09/30, 21/04/10  isi  <PageTop>

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■ 2.研究の概要と理念

 

形典・形譜(造形譜)の定立と探求


  造形プロセスの研究は,風にたなびく新緑の小枝のような緻密さと曖昧さ…秩序と乱れを
しなやかに束ねた対象…を観察するようなことです.その根元を支える概念として『形典』を定立させることは,造形構成の仕組みと解釈を支えます.客観的視点は,情感や風土とは一見無関係ですから,無味乾燥と思われがちです.しかし,『形典』さえ整えば,しっかりとその枝葉の動きを支え,『造形譜』に基づく表現のしなやかさをもって,自然な成り行きや意識的な創意工夫,感情の揺らぎや突然のひらめきをも包摂していけるはずです.根もとから享受者と共に、表象の花や実のなる枝先まで,その連なりを柔らかく位置付ける手立てとして,『形典と形譜』の更なる探求を進めていきます.  PageTop


この Arsnote (アルスノート)という造語は,芸術と科学を巡る造形プロセス(造形過程)の簡潔な記述を意味しています.

 客観的視点と主観的志向を交えた探求の記述をめざします.

 

ars とは,art の語源であるラテン語で,ギリシャ語の techné と同義と言われます.一般に技術,方法を意味し,純粋思弁的な知識や無意識の自然に対するものとして用いられ,自然と対立する人間の文化活動すべてをさしていたようです.*1  
*1:『哲学事典』 平凡社 1971
arsをさらにたどると arma になり,「つなぎ目,結合」といった盾や武器の語源に行き着きます *2 .“アー”という音は,いわゆるオーラの音で,朝に日が昇り,その光が大地に差し込むことを意味するそうです.
*2:大槻真一郎 『語源辞典 ラテン語篇』 同学社 2006
ars は,まだ知識として科学と芸術,そして技術が心の中で分離しない頃の概念だとするなら,一人の人間として,全身全霊をもって,あらゆる対象を見ぬく直感力が運命を分けていた頃でしょう.哲学的言動や科学的論理に導かれていく以前の,不思議なほどに全人的で一体感のあるとらえ方だと考えると,その精神の高揚には喜々としたものがあったに違いありません.今で言えば,まだ科学的知見が一般化しない,香りや味わいのごとき認識の一体感が保てる言葉だったわけです.
もちろんarsとは,現代からみればかなり混沌とした曖昧な考えかもしれません.しかし,科学や芸術が求める窮極のよりどころは,いまでも「黎明期」ではないかとも思うのです.Arsnoteは,その様に一体化した思索の記述を,客観的視点と主観的志向を交えて探求していく記述です.  21/04/10  isi


自他共に表現のプロセス(過程)を意識し,記録し,提示することは,存在・認識・行動のためのデザイン(考案)をすることで、つまりは,自ら生きることへの心からの挑戦です.
このプロセスの把握こそ,「矛盾」という言葉が正しい意味を持つように,表象を俯瞰するチャートです.

科学の発展につれて,次第に芸術は科学と対局に位置することのように思われていきますが,このように自然と向き合う人間活動の表現は,現代の冷めた目で見れば,存在・認識・行動の一体的な感覚による表象であり,極めて無垢な人間的想念として,なんの疑いもなく命のアウラに満たされていた時と言えるでしょう.
近代において art は,自らの内面を意識し,その時代の先端の技術と価値観に対峙するべく,画家固有の思考と一体の技能によって、自らの視覚認識の脳内分析を試み,次々と新しい抽象絵画の様式を確立し,新興のパトロンと共に、その享受へと、人々を駆り立てました.そして昨今では,技術的で,きわどく分裂的な意識そのものもの表象も,芸術の領分とするほどの広がりをもつに至ったようです. 21/04/10  isi

 自然現象のプロセスを記述するべく,感情を交えず冷徹に、論理的観察と探求を重ねてきたのが,自然科学というサイエンスノートだとするならば、子供の視点,つまりその場限りであっても全人的視点で,その感情を交えた構成プロセスそのものを提示することが,アルスノートの出発点です.

 一方,科学・技術的発展は,自然の普遍性を起点にして,自己意識の偏在を是とする傾向を強め,先鋭的探求のため,一人の人間としての生き方をも抑制し,グローバリズムと共に行動を加速されています. いまや物質と精神の間は,生物科学,神経科学、脳科学,認知科学,情報科学などの登場で埋まりつつあるかに見え,かたや普遍性を担保しない価値が,爆発的に複製されて,人心を惑わすようにもなりました.
 とはいえ,歴史的に累積性のある学問や技術とオギャーと生まれ出た無垢な心との乖離は,青春を曇らせる原因ではありません.事実を隠し隔てることこそ,人々の意識を混濁させる原因です.人工の知能を信頼するには、自分自身の知能を冷静に調べることが大切です.他者との主観の一致は、客観的評価への糸口です. 2021/04/12 
 

アルスノートは、造形構成とその解釈の記録です.芸術の共感とは,享受する(作品を鑑賞してその表現を受け止める)と共に,楽曲を奏でるように自らも表現に参加することで,構成者と共にその解釈を表現していく行為です.言うまでもなく,可能性とは,己の未踏の領域にあるのですが,その疎外感を打ち破るべく,共感できる形譜を手がかりに新たな解釈を提示できれば、素晴らしい作品となるのではないでしょうか. 

さて note とは,ここでは ars のプロセスと結果を記録するものであり,言葉だけでなく音楽でいう楽譜のような記譜(ここで言う形譜)や造形物の仕様,そして今では使用されたプログラムや使用データ、形譜からの制作プロセスまでもが,その範疇に入ります.

このプロセスという「もの」と「こと」との相乗的変容は,実動する現象です.20世紀後半より突如普及したコンピュータ・システム.つまり言葉で動く機械とそれを動かすプログラム言語は,その実動する現象のプロセスを詳細に記述し、その実行を高速・広域化しました.フローチャート,アルゴリズム(計算手順),そして汎用プログラムは,いつの間にか日々の生活のリアルタイムな担い手ともなっているのです.したがって、これからの造形活動において、これ等の新たな可能性を活用し、新しい表現方法や対話の糸口を生み出すことで、造形表現が心のより所となっていく社会が生まれるのではないかと思うのです.もちろんその為には、 目先の利害にとらわれない、芸術的協働のためのルールづくりと行動が必要です.

人間の尊厳とは,どんな生活をしようとも,いつも夢を持ち,なにがしか創造的であることです.ときには伏,ときには背伸びし,見えない背後を振り返りながら,共に身の丈に相応しいよりどころを見出せれば幸いです. 21/04/12  isi

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■ 3.研究の目的

 

  1. 一人の人間として科学,技術,デザイン(計画),芸術を見渡す眼差しを取り戻す.
  2. 造形のプロセスを観察し,その記述法を探求し,自らの体験をもってその記譜法を実証する.
  3. 音楽の楽典による楽譜のように,形典による形譜(造形譜:*Formical Score)を定立し,モデュールテーブル(Module Table)などのコード表を使ったプロセスの表記法を検証する.

1.
  造形作品とは,たとえCG作品でも、光を当てて読み取るメモリーのような存在です.例えば、保存性の高い石に彫られた人物彫刻ならば、素材が石に置換されていても、彫りの肌理の細かさなどから、表現したい対象の肌合いが類推できます.彫刻素材に準じて的確に刻まれたフォルムに、質感とのハーモニーやコントラストが加わり、作家の感性を、鑑賞者へと伝えていくわけですが、論理的に見れば、はかなり複雑で高度な情報システムと言えるでしょう.
 特に近代以降の絵画は、自然言語のごとく高度なパターン認識の賜で、画像処理やバックプロパゲーションでも及ばない、脳内変換による抽象化があるようです.更に受け手の問題は,キャンバス上でシグナル化された感覚情報を慎重に読み取り,個々の脳内でどのような再変換と解釈をするかにあるようです.
 人は誰もが表現の自由をもっています.音や光を操り高度な表現構成のできる才能をもつ人は希ですが,誰もが表現するごとに己のこころを再認識し,心ゆくまで更新していくことはできるのです.己のイメージを再構成し,その確認のための表現を公開し、他者の意見を求めることは自由です.それゆえに,その表現を尊重しつつ、意見交換の機会をもつことが大切です. 21/04/12  isi

 

2.
  表象とは,作家のイメージが記述(デッサン,デザイン,記譜)され,その解釈(パーフォーマンス,実制作,演奏)による表現が鑑賞者の内的なイメージを呼び起こし,再構成された現象です.
 画家の眼差しは,表現の中で視覚認識の在り方を熟慮し,繰りし更新される表現と解釈の関係を緻密に分析しながら、長い試行錯誤を繰り返してきました.その創作性は,常に自然という圧倒的な創造力に対峙し、オリジナリティーに向かって歩みを進めた苦難の歴史でもあります.
 「科学が芸術に与えた影響は多々あるが,芸術が科学に与えた影響はあまりない.」などと言われますが.だれもが芸術の中に多大な科学的発見の経緯を認めるようになるのは,恐らく今世紀後半のことでしょう.
 アルスノートは,造形表現の一連のプロセスを客観的に見つめ,自由に解釈し合える中間的表現である「造形譜」の位置付けと,形典による記譜法,その実制作を支える思考方法や対話方法の「呼び水」となっていくはずです.

3.
音楽の楽典による楽譜のように,形典による形譜(造形譜:*Formical Score)を定立し,造形構成のためのモデュールテーブル(Module Table:コード表)を使った表記法を探求します.
 これは,技術的にはすでに形成されているはずです.ただし,誰もが意識していないのは事実です.ですから「形典」も「形譜」も辞書にはまだ見かけません.面白いですね.このちょっとスリリングな時間を,皆さんと共にもう少し楽しめれば幸いです. 21/04/10  isi  Page Top

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