アルスノートとは? 
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更新:08/09/30 >>09/12/18>> 18/10/03
アルスノートとは
 芸術と科学を巡る 造形プロセスの記述です.

 等身大な一人の人間として,芸術と科学への新たな取り組みを模索する記述です.

 多様化し,分科を極め,先鋭化したスキルを求められる日々の仕事.
格差を前提としがちな商業文化に行き詰まりを感じながらも,
一人の人間として 科学し 芸術する 自由はあるのです.
 アルスノートとは,留まることなき科学や技術の進歩の只中で,自らの文化的立脚点を見失うことなく,芸術と科学を巡る新しい心のよりどころを探す試みの記述です.

 アルスノートは,形の見え方、作られ方を考えながら、造形表現として“形典・形譜”の定立を模索します.

 

 アルスノートは,芸術と科学の横断的な逍遙を歓迎します.それは,芸術性に科学性を内包させ,その構造から遊離・浮遊する創作的精神の記録でもあります.そして,これらの記述は,図らずも造形表現として“形典・形譜”の定立を模索することにもなりました.

 情報科学及び情報通信技術(ICT)は,その伝達表現の必要性から,この四半世紀を通して,かたちの記述のための書式(data file fomat)を確立し,世界的普及を遂げました.これらは,3Dの形譜として活用可能な十分すぎるほどの書式なのですが,「形典・形譜」の存在と位置付けに向き合う研究は,未だ未だ不足です.

 人間は,誰でも情報処理の天才です.

  それ故に,何の意識もせずに高度な情報処理をしてしまいます.その事に誰もが客観的に気付くようになったきっかけは,情報科学や脳神経科学の発展です. そして,その研究を客観的に支え,実証的に展開させているのがコンピュータとICT(情報通信技術)というわけです.



“情報デザイン”…つまり,ものごとの言語化,記号化,抽象化は,軽やかな思考を生みます.今ではスマートフォンの普及に見られるように,例えばAさんは電話番号を携帯し,どこに居ようと音や文字や画像を受発信でき,その位置まで特定できます.これは,昔から夢見ていた人間の以心伝心的夢想の具現化とも言えます.情報技術としては革新的ですが,情報デザイン的には古代よりイメージされていたコミュニケーションテクニックです.夢を見る人は,誰でも生まれながらにして情報処理の天才というわけですが,自然科学に目覚め,技術的な克服を重ね,こんな複雑な機器と機構になっても,その夢にも見た便利さの方が,その具現化のための代償より勝り,需要と供給のバランスが成立しているようです..
 これらの機器は,指一本触れるだけで多様な操作を識別するのですから,タッチパネルシステムを生み出すまでには,これまた大変な苦労や存亡を掛けた挑戦がなされたはずです.しかし,思い付きとしては,子供でも知っていることで,指先で目をつぶった相手の手のひらに字を書いて,当てっこしたりしする遊び程度のこと.情報処理の天才児達は,くすぐったいのと書かれた言葉の面白さが重なったりして,その楽しさが倍加するのです.この天才達には,まだまだ楽しい未来があるはずですが,技術は両刃の剣.未来に向かうには,賢明で普遍性のあるモラルが不可欠です.

 音楽の楽しみも,誰もが情報処理の天才だからこそできることですね.慣れれば楽譜を見るだけで,♪オタマジャクシからがメロディーが聞こえてくる…という人もいます. すごい情報処理能力です. ただし,これには,それなりの訓練がいるようです.具象と抽象の自在な変換.そして,それに同期する訓練された身体性.それを喜々として楽しむ人間性は,まさに情報処理能力の賜です.


 人は,言葉を記録し,文典(文法と語法)に気付き,法典を定め,楽譜や楽典を生み出し,情報科学的視点を獲得してきました.
  したがって,なまえ(名辞)が定まらずとも,いつの間にか世の中に「形典・形譜」のような概念が形成されていても不思議ではありません.

 誰もがああたりまえのように情報発信をします.言語表現のルールには,文典(文法と語法(grammar books)),音楽表現のルールには楽典(musical grammar)と それに基づいて記述された楽譜があります.舞踏譜などの提案もあります.ではなぜ,造形表現には「形典」とそれに基づく「形譜」がないのでしょう?造形デザインを含む近傍として,どうしてそれを学校で教えてくれないのでしょうか?もう21世紀なのです.
  造形表現のルールには形典(*Formical (formative) grammar)があるべきです.形典ができれば,そのルールに基づいて造形作家(composer)は,造形構成の結果を形譜(造形譜:*Formical score )として記述でき,誰もがそれを読み取って,実制作者(performer)として活動する楽しみを味わえるはずです.中等・高等の美術教育も厚みを増し,鑑賞だけの美術ではなく,音楽同様に好きな作家(composer)の形譜を読み取って自ら実制作(perform)に挑戦することが可能となります.
  地域(地方)創生のためには,地元の役場や画材屋でその地域の文化財の形譜が入手でき,文化財の保護と共に,新たな解釈の作品を競って生み出すような活力があって欲しいものです.そうなれば,日々の生活で美術はもっと身近なものとなり,部材を3Dプリントできる家具や日用品の形譜が販売されるようになり.教える人,教わる人を含め,造形活動に多くの人々が参加できるようになるでしょう.

  音楽には,作曲者,編曲者,指揮者,演奏者など,表現のプロセスを区分できる概念があります.造形美術の分野でも,コンポーザーとパーフォーマーを区分できる建築などの設計図が存在し,形譜の役割を果たしているわけです.集合住宅ならば同じ間取りでも内装の仕様を選べたり,更に独自のアレンジメントが施されることもあるわけですが,その秀逸さが評価されていても,音楽のように譜面(設計図)を複製して広く販売されることは希です.しかし,これも過去からの些細な慣習かも知れません.そのような形譜がリリースされれば,地域創生も相まって意外な展開が生まれそうです.

 自然形態と同様に,形式や様式の定まった伝統的な造形は,歴史の中でデザイン的特徴が継承されます.その継承が無償か否かという著作権の問題は,作曲家に著作権,演奏家に著作隣接権が与えられている現状からルールを広げていく事になります.これは専門家とその時々の社会が決めることなので,未だここで述べることはできません.

  ところで,このように考えると,今更述べるまでも無く,実は世の中では,形譜(造形譜)がすでに売買されていたわけですが,呼び方も,位置付け方もそれぞれです.美術での素描,下絵,モデルやマケット.機械の図面やひな型(モデル),設計図,建築模型なども実は形譜の仲間といえます.では,音楽で演奏(performance)に当たる職種はというと,自作自演的な芸術家も多い訳ですが,建築のように設計者と施工者がはっきりと分けられる場合もあります.今後は,映画のクレジット(end roll) にならって,施工者個人の名前を記すことも必要でしょう.

アルスノートから形典へ…

 アルスノートは,造形作品の制作過程とその構成結果を簡潔に明示し,制作参加者が相互理解を深めるための芸術・科学・技術にわたるプロセスの総合的記述です.芸術を科学にするのではなく,革新的技術をあたかも芸術的秘技と見せかけるつもりもありません.アルスノートは,造形表現による相互コミュニケーションを深めるための「形譜」を含めた制作プロセスの記述です.
  音楽が楽譜によって作曲と演奏をとりあえず分けて大まかに把握することができるように,創作の結果としての造形構成(コンポジション)と実制作(パフォーマンス)を無理なく分けて把握することができるはずです.アルスノートは,その新しい記譜法を定立させていく実証的な資料となるでしょう.

 音楽と異なり絵画的な構成は,下絵だけで無く作家の試行錯誤の過程が重ねて描かれ,X線などで発見されることがあります.音楽の場合は,肉筆の譜面から,その推敲が明らかになるようです.
 このように,自作自演による表現は.造形構成と実制作を分けて認識することが難しい様ですが,結果を正しく記譜することは可能です.また,試行錯誤の過程を知ることは,構成法を知る上での貴重な資料となります.

  しかし,未知の可能性とは常に未踏の領域に広がっているものです.

  アルスノートにおける科学的視点は,形典,形譜(造形譜)の論理的基盤を形成し,新しい造形プロセスの創出を伴いながら,コラボレーションのための共通の記譜法やツールを生み出して行くはずです.これらの領域は,造形だけに限っても,雑貨から彫刻,建築,都市に至るまで実に広大です.もちろん,音楽で陥った著作権の悩ましい問題が,造形美術でも繰り返されるという心配はあります.同じ轍を踏まぬよう進めなければなりません.回帰をも含みながら前進は,持続するでしょう.なぜなら,良かれ悪しかれ情報技術が文化財の保存へと新興しつつあるからです.これは,手業をもつ人間としては実に悩ましい問題ですが….

 

21世紀は,3Dソフトや3Dプリンターの普及期

 21世紀では,幸いにもコンピュータグラフィックの世界で共通のフォーマットとなったワイヤーメッシュ・データやポリゴンメッシュ・データを,造形譜として活用できます.三次元CGのソフトは高価なものでしたが,今では使いこなせないほど優れたフリーソフト(Blender等)も,入手可能となり,誰もが,手軽かつビジュアルに立体データを送受信できる環境と成りつつあります.3次の元測定のできる機器も普及しつつあるので,今後は粘土モデルやマケットから,あるいは壊れた造形物からも手際よく3Dデータを写し取れるようになるでしょう.また,これらのデータ(形譜)をどのように解釈するかを,3D-CGソフトや3Dプリントで検討することもできます.やがては住宅や店舗の改築を含め,市民が世代を超えて積極的に参加でき,美しい町並みを計画できるBIM(Building Information Modeling)システムが役所の建築課で採用されるかもしれません.

 以上のように,アルスノートは,芸術と科学を巡る造形プロセスの記述なのです.

詳細はこちらの「形典」をご覧ください.

 造形プロセスと形典と形譜による記述は,客観的に構成の要素や要因をモデュール化して表記できます.ちょっと専門的になりますが詳細はこちらの「形典」「形典の基礎概念」をご一読ください.これらは,造形のハーモニーやユニティーを探求する新しい糸口となるでしょう.音楽で言えば作曲法の基礎の基礎(例えば平均律の比較)といっった所です.
  何はともあれ,作家が構成(形譜)と構法(プロセス)を客観的に実制作者や鑑賞者に伝えることは, 相互のコミュニケーションをより円滑にし,芸術表現への着実なアプローチ一を築いていくはずです. ISI

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